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岸田法律事務所 による顧客の倒産した場合に関するQ&Aです。
ビッグ3に公的資金の投入がなされましたが、ビッグ3とそれらのサプライヤーの将来は依然として不透明です。ビッグ3や大手サプライヤー顧客に巨額な売り掛け債権をもっていらっしゃる会社もあると思います。そこで、ビッグ3やサプライヤーが倒産した場合に関連する質問と答えをリストしました。
米国の自動車部品会社のこの数年のチャプター11のケースを見ていますと、無担保債権者の回収率は極めて悪く、5%以下という場合がよく見られます。0%というケースもあります。現時点で、米国の自動車会社や自動車部品会社の担保債権が市場でかなり額面割れしていることを考えますと、顧客が破産申請した場合、無担保債権の回収はきわめて困難と考えます。
破産申請の準備は、秘密裏に行われ、社内でもトップの経営陣と外部のプロフェッショナルしか知らない場合がほとんどです。従業員には、破産申請直前まで、会社の財務は健全で、破産することは無い、と言うのが一般的です。従って、破産申請に関しては、購買の人の言うことはあまり当てにならないでしょう。なお、大きな会社の破産申請の準備では、関わる人の数が多いため、事前に情報が漏れることがよくあります。ニュースに十分注意する必要があります。
可能ではありますが、顧客の合意が要ります。顧客が担保権の設定に合意することは稀です。しかしながら、購買担当に持ちかけてみる価値はありそうです。低順位の担保でも、無担保よりも数段有利なります。なお、破産申請前90日(関連者の場合1年)の間に対抗要件を備えた担保権はPreferenceと見なされる場合があります。
サプライヤーのOEM依存度を調べます。依存度が高ければ高いほど、連鎖破産の可能性が高まります。
米国連邦破産法は、破産を理由に履行の終わっていない契約を解除することを禁止しています。契約に、破産の場合契約を解除できる、とあっても、その解除は破産法により無効となります。従って、別の理由がなければ、既存の契約どおり、供給を継続せざるを得ません。破産申請後の供給については、Administrative Expenseとして、100%支払われることが多いのですが、最近のケースでは、払われないケースもあるので、前払いまたは受け取り払いを要求することをお勧めします。なお、破産申請直後に出される、Cash Collateral Order(上記参照)に支払い条件が載っていて、前払いや受け取り払いを認めていない場合があります。
直ぐに行うべきことは、Reclamation Letterを作成して提出します。
ビッグ3や大手サプライヤーの倒産の場合、大口の債権者は、債券の保有者と考えられます。大口の部品サプライヤー債権者もあるかもしれませんが、よほど巨額な債権額で無い限り、無担保債権委員会に招待されることはありません。もっとも、参加したところで、参加費用に見合う見返るがあるかといいますと、最近の米国自動車部品会社の破産の実例からしますと、疑問です。なお、無担保債権者委員会に参加しない限り、得られる情報は、ニュースで得られるレベルです。この時点でじたばたしても、お金がかかるばかりで、得られるものは多くありません。
日本の会社から売る場合、日本の保険がカバーする場合があります。これについては日本の本社の保険担当者にお尋ねください。なお、債務者のレーティングが低いと保険の対象から除外されるようです。米国の会社から売る場合、保険やCredit Default Swapを購入するという選択肢があります。どちらも、現在、掛け金が非常に高いという問題があります。Credit Default Swapは、については以下に解説があります。
クライスラーのような大企業の場合、株式や社債が市場に流通していなくても、債権(ローンや上記のCredit Default Swap)が流通しています。債権の市場価格の変動が、財務状況を予想する手がかりになります。債権が流通していない非上場企業の場合、財務状況を知る手がかりは限られています。財務諸表を見て、所得がある、純資産がある、から、破産の恐れは無い、という判断を下すのは、極めて危険です。財務情報は過去の情報であること、そして融資の停止や引き上げそして取引の停止によりキャッシュフローが急激に悪化する場合があること、をご理解ください。取引先からのうわさも重要な手がかりとなる場合があります。実際に訪問して、稼動状況、在庫状況、を見てくるのもいいでしょう。
ベンダーの財務状況が悪い場合、もし、原材料の供給が止まったら、という不安を持たれる方が多いと思います。一つの対策としては、ベンダーの事業が停止した場合、自社の社員を送って、事業を継続できる、という契約を結ぶ場合があります。しかしながら、自社が事業を継続することで、自社がベンダーの債務を負うかもしれないという重大なリスクがあります。他の対策としては、顧客に相談して、ベンダーの事業が停止した場合の代替策を検討することでしょう。気をつけなければならないことは、相談の結果、別のベンダーに転注する場合、破産ベンダーに訴えられ、巨額な損害賠償を求められるリスクがあることです。また、他者にあるベンダーが破産しそうだという発言が理由で、名誉毀損で訴えられるリスクもあります。別の対策としては、自社でベンダーの使用する原材料を購入して、そのベンダーに無償支給で製品に加工してもらい、破産に備えて、余分な在庫を確保する、というものです。無償支給の実務的な問題が多いばかりか、設計変更や顧客からの受注の低下による死蔵品のリスクも増えます。
クレジット・デフォルト・スワップ(Credit Default Swap/CDS)とは、債権の所有者が、一定の掛け金を払って、債務者に破産申請等の事態が発生した場合に、債権額の一部または全部を払ってもらう、という債権保証契約です。
この契約は、市場で証券として流通します。最近の金融危機で、CDS市場は、壊滅的な打撃を受け(破綻した米国の最大の保険会社AIGも、CDSを多く保有しており、これが破綻の原因の一つとなった、と言われています)、以前のように低い掛け金で債権を保証してくれる相手が簡単に見つかるわけではありません。
しかしながら、債権の全てを失うリスクが現実となった今、全てを失うよりは高い掛け金を払った方がいい、という考え方もあります。
米国自動車会社・自動車部品会社顧客への無担保売掛債権の掛け金は、前払いで、債権額の71-71%(2009年3月1日時点)が要求されます。顧客によって信用度が異なりますので、これは平均とお考えください。なお、これに、月々の掛け金が加わります。
米国自動車会社・自動車部品会社顧客への掛け金の目安としては、Markit CDX North America High-Yield Indexが参考になります。http://www.markit.com/markit.jsp?jsppage=indices.jspにこの指標があります。指標は日々変動しています。
Critical Vendor(Essential Vendorとも呼ばれます)とは、チャプター11破産手続きにおいて、事業継続のために不可欠なベンダーとして、ベンダーの破産申請前債権を優先債権として支払い、ベンダーからの供給を維持する、というものです。全ての裁判所で認められるわけではありません。最近のチャプター11のケースでは、回収率が非常に悪いため、Critical Vendorとなれれば回収率を飛躍的に向上することができます。但し、Critical Vendorとなるには、破産申請前の支払い条件に戻す等、一定の不利な条件を飲むことを要求されます。また、最近のチャプター11のケースでは、債務者の資金が底をつき、優先債権が払われない場合もありますので、Critical Vendorとなれば破産申請前債権が100%回収できる、とは限りません。
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